なるほど

例えばある説を考え出して発表する場合には、それを肯定し裏付ける事実のみを述べるのでなく、それを否定するような事実も一つ残らす書きだす必要があるのです。
〜中略〜
これに関する原則の一例をあげますと、諸君がある理論をテストとしようと思う場合とか、あるいはあるアイデアを説明しようとする場合、その結果が右とでても左とでても、それを必ず発表するべきであるということです。むろんある種の都合の良い結果だけを発表していれば、その説はいかにもかっこうよくみえるでしょう。しかし本当は不利であろうとなかろうと、その両方の結果をすべて発表すべきなのです。
〜中略〜
つまり研究所や大学内で研究費だの地位などを保ってゆくために、心ならずもこの良心を捨てざるをえないような圧力を感じることなく、自由に生きてゆけるような幸運を、との一念に尽きます。願わくは諸君がそのような意味で、自由であれかしと心から祈るものです。

カルフォルニア工科大学1974年卒業式式辞 リチャードファインマン